これは病院でもよく聞かれた質問です。
入院している最中は、病棟で一緒になる患者さんがいます。大きな声で叫んでいる人がいると、認知症になりたくないという話にはなります。
本記事の内容
- 運動を行い、脳機能の低下を防げる
- METs(メッツ)とは
- 脳機能の低下を予防する運動量
このような内容を解説していきます。
患者さん達でよく話にでてくる「認知症になりたくない」や「最近もの忘れがひどくてどうしたらいいのか」という話題。
脳の機能を保つには脳トレなど手段はいろいろありそうですが、なんとなくでも皆さん運動が良いというのは事実のようです。
そこで、認知症予防の運動に関する文献はあるのか。
ありましたので、解説をスタートしていきます!
運動を行うことで脳機能の低下を防げる
『実際どれくらいの運動を行うと、高齢者(50代以上)の脳機能低下を防いで頭に良いのか?』を研究した内容(①)があります。
人であれば、誰しも50歳を超えると脳機能(頭の機能)が下がってくることは周知の事実だと思われます。
この脳機能の低下を防ぐための運動は、どれぐらい必要なのかという話。
病院ではよく入院を機に、認知症が極端に進行するケースが少なくありません。
医療機関では、患者さんが認知症の方と関わる機会が多く、人ごとと思えないからこそ、自分も認知症にはなりたくないと、いつも思います。
正確に知らなかったですが…こんな内容が出ているなんて、実に面白い。
この研究がどんな内容だったかと言いますと、
- 1995年から2021年までに発表された研究をまとめた
- 50歳以上の参加者4800人程度のデータをまとめ(ランダムに選出したデータ)、どんな運動をどの程度やると脳に一番良いのか?を決定した
- 参加者のうち、45%が軽度認知障害と診断され、54%がBMIが過体重または肥満だった
ような感じです。
この研究で脳の認知評価として使用されていたのは、
MMSE(ミニメンタルステート検査)
という医療機関でも脳機能検査としてよく使われるものが使用されていました。
データの中での半分以上が肥満であったというのも興味深い。
それぞれMET(異なる運動の種類でエネルギー消費量を比較した)を計算。
1週間あたりのメッツ・分(MET-min)として割り出した。
結果発表
- 約1200MET-minまで運動は認知機能に対して大きなプラス効果を示した。
- 1800MET-minを超える運動が認知機能を向上させるかどうかを判断するにはデータが不足していた。
- 脳を改善するために必要な最小限の運動量は724MET-minと推定された。認知機能の改善に関連する最小運動量は1075MET-minであった。
結果にでてきたこのMETsとは?
と思った人も多いと思うので、その説明から。
METs(メッツ)とは
聞きなれない人がほとんどだと思います。
この「METs(メッツ)」
身体活動の強さと量を表す単位として、このMETsはよく出てくる言葉です。
身体活動の強さについては「METs(メッツ)」を用い、身体活動の量については「METs×min(メッツ・時)」で計算されます。
METs(身体活動の単位)
身体活動の強さを座っている状態の何倍になるかを表す単位です。
- 座位:1メッツ
- 普通に歩く:3メッツ
ってことで、
脳機能の低下を予防する運動量
先ほどの結果発表での1に書かれてたMETsの値は
WHOが推奨する身体活動の上限値(中強度の活動で300分/週、精力的な活動で150分/週)に相当〔②〕しています。
参考までに、
「脳の働きを改善するための運動量の推奨値」で筋トレとウォーキングをピックアップして紹介します。
- 筋トレ:自重・マシン使用(中強度)
- 最小レベル=1回40分を週に3回、または1回30分を週に5回
- 最適レベル=1回45分を週に5回
- 筋トレ:自重・マシン使用(高強度)
- 最小レベル=1回30分を週に2回
- 最適レベル=1回35分を週に3回、または1回20分を週に5回
- ウォーキング(中強度)
- 最小レベル=1回60分を週に3回、または1回35分を週に5回
- 最適レベル=1回65分を週に3回、または1回40分を週に5回
- ウォーキング(高強度)
- 最小レベル=1回40分を週に3回、または1回25分を週に5回
- 最適レベル=1回45分を週に3回、または1回25分を週に5回
という感じです。
もっと細かいデータが知りたい人は、厚生労働省が出している文書があるので参考にしてみてください(③)。
認知症はこれからさらに罹患される方が拡大すると言われているようです。
患者さんたちも皆さんが口を揃えてボケたくないといいますが、やはり運動は薬以上に効果があるし、副作用がないので良いことづくめ。
みなさん運動は、食事・睡眠と同じくらい大事なのはなんとなくわかっていたと思いますので、運動を薬より優先してやっていきましょうって話です。
読んでいただき、ありがとうございました。